まだタイガーが獅子奮迅の働きをしていたころのことだ。吸引器には吸い上げた喀痰を溜めるカップがある。このカップは使い捨てではなく洗浄が必要となる。毎日いや毎回洗浄すればいいのだが、一台しかなく、洗浄中にもしゴロゴロさんが訪れるとすぐに対処できない。そのため私と妻がそろって家にいる日曜日に洗浄していた。
喀痰を溜めるので、夏場は、においも気になる。少しでも快適にならないかと思い台所用洗剤を少し入れて作動させると大量の泡が発生して失敗した。洗剤はダメだったので、泡の出ないものを探してみると夏の入浴のときに湯船に垂らして使っているハッカ油があった。
ミントの香りでリラックスできてにおいも抑えられるかもしれないと思い、使ってみた。泡も出ることなく、ミントの香りで満足いくものだった。
何度目かの吸引時に吸い上げる力が弱々しくなった。接続やカップの密閉具合を調べてみると、カップの底に細かいひび割れがあった。この時にはカップ自体を長い間交換していなかったのが原因だと思ってカップを新しいものに交換した。
次の週の日曜日も同じように洗浄し、ハッカ油も使用した。何回目かの吸引時に、先週と同じ現象が起こってしまった。毎週日曜日に訪れる恐怖。日曜日よりの使者かなどと思っていた。しかし、時をさかのぼって考えてみて、ハッカ油にたどりついた。日曜日よりの使者はハッカ油だった。
後でググってみると、ハッカ油はプラスチック製品では保存できません。ボロボロになりますと書かれていた。自らの行為に恐怖し、馬鹿さ加減に涙が出た。
この事件から得た教訓は、まさに『生兵法は大怪我のもと』そして洗浄はこまめにしようということだった。
そんな策に溺れる小策士の我が家の一員として、今日もタイガー&ドラゴンは、息子の「〽オレの オレの オレの痰をひけー」に呼応して、ドドドォ~‼と馬力あるコーラスを入れてくれるのであった。