わが家ではこの儀式は日曜の午後3時となぜか決まっていた。その時が近づくと、家族全員、憂鬱な気分になった。
鼻チューを抜くのはすぐ抜けるのだが、入れるのはなかなか入らない。ひとりが息子の頭を押さえつけて、動かないようにし、もうひとりが息子の上にまたがって、片方の鼻の穴から、鼻チューを入れる。
これだけのことだが、一方は逃れようと精いっぱい抗い、かたや、彼を動かないように必死で押さえる。失敗すると、反対の鼻の穴から鼻チューが出てきて、ドキッとする。
痛くて気持ち悪いのだろう、鼻から入れる胃カメラのような感覚だと思う。後にバクバクの先輩平本歩さんも著書『バクバクっ子の在宅記』(現代書館2017/8/15発行絶賛発売中)に「痛かった、涙が出た」と書かれていて実際に、自分で体験してみようとしたが、やらなくてよかった。息子よスマン。
とにかく毎回、双方、汗だくの攻防であった。最後に、マーゲンチューブの先が、胃に届いているかどうか、シリンジで実際に空気を入れて聴診器で確かめる。きちんと胃に到達していれば、空気を入れたとき、バフっと音が聞こえる。ちゃんと入っている音を聞くまで悪戦苦闘していたのが、今となってはいい思い出だ。
今、息子は胃ろうというシステムを採用しているので、このいさかいの元の鼻チューとは3歳でおさらばした。
またその話は、別の機会ということで。